Atelier Airi

強めの集団幻覚を見て強度を高めたい人向けの画廊。 ご支援は活動に充てる。

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Atelier Airi

2024/10/26

Youtube等の運用方針

Youtube等の運用方針

芸術家としての活動スタンス  先に伝えておくわ。 つまらない話をしてすまなく思う。 わたしのことを好きな人たちを喜ばせてあげることは副次的に考えているのよ。 だからここも精力的に更新するのは難しくて。 ”ついでに”そうなればいいけれど、<わたし>が産まれたのは、 それありきではないの。やりたいこ...
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2024/10/26

〈公式小説〉 蓮は踏まれ、聖者を乗せる

〈公式小説〉 蓮は踏まれ、聖者を乗せる

<meta> !世界観/キャラクター設定に関する記述を含む警告 PG‐15 ────────────────────────────────────── <outline>   親愛なるエスのための証拠と自己蘇生の法則 蘇我 愛理 <evidence and Law of Self-resusc...
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Atelier Airi

2024/10/26

Youtube等の運用方針

Youtube等の運用方針

芸術家としての活動スタンス  先に伝えておくわ。 つまらない話をしてすまなく思う。 わたしのことを好きな人たちを喜ばせてあげることは副次的に考えているのよ。 だからここも精力的に更新するのは難しくて。 ”ついでに”そうなればいいけれど、<わたし>が産まれたのは、 それありきではないの。やりたいこ...
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2024/10/25

概要|集団幻覚 〈蘇我 愛理〉

概要|集団幻覚 〈蘇我 愛理〉

<meta>⚠️(創作/ストーリー/キャラクター設定、世界観に関する記述を含む)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ✦ 序論 〈 劇場型 少女性 V-Artist 〉  謎めいた永遠の少女。過去から届く星の光。あなたの内に映る数多のわたし。 少女時代で時を留めている少女性そのもの、蘇...
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〈公式小説〉 蓮は踏まれ、聖者を乗せる

Atelier Airi

2024/10/26

〈公式小説〉 蓮は踏まれ、聖者を乗せる

<meta> !世界観/キャラクター設定に関する記述を含む 

警告 PG‐15

──────────────────────────────────────



<outline>   親愛なるエスのための証拠と自己蘇生の法則

蘇我 愛理 <evidence and Law of Self-resuscitation for the dear Es/>:

劇とは一つの幻覚を集団で見るようなものだと謳う。

蘇我 愛理は、田舎に生まれた芸術家の少女。

蘇我 愛理は、語りかけるアトリエ。

あなたはわたしを見聞きし、記憶する。

そこにはわたしが存在する。

触れるなら温かく、嗅げば香る。

蘇我 愛理は、事実を再構成したフィクション。

現実は無慈悲で救いがない。

だが、あなたがなにを真実としても構わない。

</outline>



 9歳の時だった。

鍵だけを伴い帰宅すると、母は死体だった。

家を建てる時、母の憧れで設けた二階の吹き抜けから、

虎ロープが一条、高い天井を貫いていた。


終端部に繋がる人間の体は鉛のようで、母のものだと思えずに、

美しく化粧を施した顔を見ても、それを久しぶりのことだと思うだけで。


ただいま、お母さん。──ただいま。……

──お母さん。起きて、やめて。なにしてるの。

……お母さん? ねえ……お母さん。

わたし、怒るよ……。ふざけ……てる……のね……

────── ! ! ! !


母に向かって、初めて叫んだ声色で。

答えがない、なんど呼びかけても。

顎の僅かなズレから、糊塗された花弁色の唇の端から内側が見えた。

土気色の粘膜を見た。首一周の濃紺に近い紫のあざが何だか分からなかった。


初めて警察に電話した。

母が自殺しました。死んでいるみたいです。

同じ事を何度も聞き返され、違う人間に代わる度、無限に思える長い時間を待たされる。

その間、肩に子機を挟みながら、改めて生暖かい母の脈をとり、息がない、

鼓動が聞こえない事を確認しても、死んだという確証が持てなかった。


底知れぬ心細さにじっと嬲られているしかない。

5時間くらい経った時、電話口の相手が、優しい女性の声に代わった。


「お姉さんとお話してくれるかな? お名前教えてもらえる?」

──(奥歯がまるで噛み合わない。何も言えない)

「いまはどこにいるの? お家?おへや?」

──はい。一階です。

「どうしているかな。お母様と一緒にいてあげているの?」

──いいえ… 見えない ところ。


「どうして?」

「…… …… …こ……こわい……怖 いから……だっ て……し、しんで しんでるんでしょ……」

「……、そっか…」


沈黙が流れる。わたしはこの時、彼女が言葉に窮していると感じ取った。

母が自殺した家で、物体化した人間と、一人で留守番している娘。

やりにくかった。なんの電話なんだろう、これ。

電話、嫌い。電話嫌いだ。電話が嫌いだ。この時から。


「……今ね、おじさんたちが、お家に行くからね。

大丈夫だから、お話このまましてくれるかな。

おじさんたちが来るまで一緒に待っててね。」


 現実に思えない。なにかに包まれている。何か不条理な異次元が飽和した観照だけがある。

更に18分経った時、それは訪れた。家に踏み入る紺色の群れ。

人種を画一化してしまう服と顔の翳りで、判で押したように区別がつかない。

現場検証を行う鑑識官や監察医、事情聴取、作業状況を円滑に運ぶ警官たちは、

嘗てこの家に数える程しかない来客を、全て合わせても優に凌ぐ大勢だった。

意志を持つ一つの群体が、統一の目的と別々に、それぞれ手足のように、

各自が何かの目的をこなすために動き続ける様子を傍観していた。


同じ家にも思えない。

招待を受けていないみたい。客でもない。

ここで何の犯罪も起きてないのに、なんで分かりきったことを調べてるんだろう。

わたしの方が旅で立ち寄った宿みたいに、取り残されて、事情聴取を受けることもなく、

この惑乱が過ぎ去るまで突っ立って見つめていた。


警察の作業が継続する中、遅れて父が帰ってきた。

夜になって仕事を終えた警官たちが引き上げ、ひとり欠けた家族だけになると、

父はわたしを殴り、突き飛ばし、詰った。


「どうして救急じゃなかったんだ、救急は119だろう、なんで、どうして!!

バカ野郎!!お前が死ね!!クソガキ!!死ねっ!!」


 ──父はようやく緊張の糸が切れたように、泣き崩れた。

わたしはなにも言葉が沸き起こらなかった。


 母のことを教える。

母は、気が強く快活と上州女のそれでありながら、それにしては繊細な女性だった。

名にある「礼」の一字を示すように、真面目で厳格な、農家に育った勤勉な娘。

短大を出て保母をしていたのも、当時は珍しいことだったかもしれない。

なぜ父と結婚したのか聞いた時は、淡々と「どこでもへばりついてきて邪魔だよね」と鬱陶しがってもいたが、それが満更でもなさそうだった。

 母は、毎週図書館に行くのが好きだった。

幼い頃から必ず一緒で、家には母の好きな本──例えばシドニィ・シェルダン、

語感がいい名前で覚えている──があったから、わたしは自然と読んで書に親しんだ。

どうやら推理小説はわたしの興を唆るものではなかったけど、己のさわれるものか、

それはどうわたしにふれるのか、やわらかいのかどうかも、

未知なるモノに挑む、あれを好奇心と言うだけじゃ透明感に足りない、あれが快感。

「これ読む?」と勧めてくれた数冊の本を、今でも憶えている。


 わたしはいじめを受けていて、どう頑張っても指先一つ動かせない朝、

わたしを床に引きずり下ろして支度をさせる事が母の朝の憂鬱の一つだった。

どんなに前日準備しても、宿題をどこに置いたか、洗った上履きは、給食袋は、

白衣は、学校に納めるお金は、ピアノのお月謝は、今週の『バイエル』どれを持っていけばよかったのか、

それから友達に借りたままの消しゴムや、筆箱に入っていない消しゴムのこと……

逐一全てがやり直し、終わりがない失敗について彼女は怒りを抱えていた。


 わたしは異常な低血圧で、寝付きが悪く、朝自力で起床できず、酷い忘れ物が後を絶たない。

「ズル休みさせない、行きなさい。行ってきて。」と言う母に逆らえず、

毎日飽きもしない馬鹿どもの、手を変え品を変えた様々な迫害を受けながら、

貪欲な読書欲で通いつめた図書室。そこは、現実を放擲するのに最適の喫煙所だった。

毎日3冊を借りて完読して返し、休み時間と放課後入り浸った分も合わせると、7冊は消化していた。

この頃は読書ノートなんてつけなくても済んだし、血流と共に脳細胞を入り浸る知識の新鮮さが快かった。


 母は機嫌が良いと絵や手芸を教えてくれたが、

わたしを、いつも奇妙な獣に遭遇したかに蔑む目つきで見ていた。

なぜこうも「出来ない子」であるか、母には原因不明で、わたしの教育に疲れ果てていたんだと思う。

勉強を見ても、ボタンを掛け違うとそこから頑として動かないわたし。


「1+1はどうして、いきなり、2になったの?

1は1だから、2じゃない、1と1をいっしょにくっつけたら

1と1だよ。1と1。だから、1に、たす、1は、11か、1と1か、1+1。

ここになんで『わ』を書いたの? もう1+1じゃん。

『1』というかずだから、べつの『1』も、おなじ1でしょ!!

1と2は別のことなの!!嫌だ!!納得できない!!こんなのおかしい!!

おかしいのに2にしたくないっ!!おかしいことをおかしくなくさせる!!

おかしいのに!!おかしいままにするのいやだ!!

おかしい算数なんてだいっきらい!!しんじゃえ!!

しんじゃえ!!しね!!しねーーーーーーーーっ」


 過呼吸に苦しんだ時の、母の冷たい視線を忘れられない。


「なんで?いまどうしてそうなったの?なにが起きたの?

 え? でも、何が起きたの?なにもないところでなにかしたの」


 正しいから正しいというトートロジーを受け入れろ。

内なる無神経に啓蒙しろ。 そうしろと。

彼女は、わたしに家事の類を一切教えなかった。

娘を愛してはいたが、限界だった。

──そして最愛の夫が心臓病で倒れた瞬間、母の中ではっきり覚悟したのだろう。

自分の時代の終焉を悟ったのだろう。

絶望に塗りつぶされて、この世がちっとも惜しくなくなった。

そこには絶大な虚無だけがあり、それが、あの人の心を殺した。


 わたしにも憶えがある。あの地平を離れて哀しく、曇りなく、離陸してしまった意識のことだと思う。

父という足かせがなかったら、吊ろう、いつでもドアノブを見ていた。


 わたしは少女時代、曖昧に絵が好きで、様々な”なりたい”を持っていた。

けれど、このとき全てが白紙化した。

この現実を超えうるイメージを持てなかった。

父は娘の一切の希望欲動を否定し、与えることを極度に嫌い、長年のネグレクトがなされた。

中学校に行かなかった。すべての子供は義務教育を受けさせなくてはならない行政的指導、教育機関のおせっかいから逃れられない分、フリースクールへ申し訳程度通いながら、自分のために費やす全てを放棄した。

しかしわたしは、生の望みを浅ましくも捨てきれなかった。何でだろう。


 死ぬほど底辺な高校を卒業するのと同時に、黙って東京の美大を受験した。

合格したから、父がポルシェを買うと息巻いて溜め込んでいた金を盗んだ。

入学金、約200万。それと万一のアテが外れた時用の学費。

節約の為、家から東京に通い、上位2名を目指して躍起だった四年間。


わたしは、遊びじゃない。

遊びで来てる金持ちのお嬢様なんかに負けない。

金と精神と人生の豊かさに恵まれきった、汚泥を知らないあんた達になんかに、

学費をサービスしてやらない。それに相応しい酬いをもぎ取ってやる。

全員全員全員殺してやる。

父の暴力や暴言、確執、衝突、様々な妨害と戦いながら。


 無事卒業する頃には、あれだけ憎み合った父の理解を得ていた。

わたしは戦うことをやめなかった。

どれだけ死にたかろうと、勝ち取るために傷つくことを厭わなかった。

社会への熱烈な片思いにも似た、止むに止まれぬ不毛な殺意だけを糧としていた。


 達成感はないが、だから今は旅をしている。

わたしはどこへ流れ着くのだろう。

どこへ消えていくのだろう。

訣別してしまった過去に関して今何ら感情はない。




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